こだわりの特徴
自閉症の子育てにおいて難しいと感じているのは「強いこだわり」への対応です。自閉症の子は周囲の小さな環境の変化にも不安を感じてしまい、自分が気に入ったものや特定のやり方に強いこだわりを持つそうです。
こだわりの例
こだわりには長く続くもの、気が付いたら消えていたものなど様々です。どうやら成長と共にこだわりが変化したり他のものに移っていくようです。息子にあったこだわりの一部が以下の通りです。
おもちゃを並べる
トミカなどのおもちゃを感心するほどズラリと並べるのが定番。目線もおもちゃに合わせて寝そべって遊びます。その姿を見て「あぁ・・自閉症ぽい」と感じる親御さんも多いのではないでしょうか。息子は1歳くらいからよくやっていました。今でもよく並べています。
ひどい偏食
2歳後半くらいからひどい偏食になりました。私の作るごはんの味や食感が良くなかったのかもしれませんが、保育園の美味しい給食も受け入れられず、いつも「白米」「パン」「くだもの」しか食べてきませんでした。せっかく作ったご飯を食べてくれない・・このショックは意外と大きいものです。
浴室の床が濡れているのが嫌だ
何故そこに🙄?と思うよくわからないこだわりも発生します。最初は何が気に入らないのか分かりませんでした。言葉で表現できないので、子供が何を言いたいのか、どう対応したら良いのか模索しました。どうやら浴室の床が濡れた状態では足を踏み入れたくなかったようです。その子にとってのこだわりは様々なので、気づいてあげることも必要です。
この道は必ず通る
保育園の送迎ではいつも同じ道を通りますが、息子には必ず「こっちの道を歩く」「この場所で止まる」「あの場所に座る」「ここにある掲示板を触る」などルーティーンがありました。別の道から行くのは嫌がり、止めようとすると癇癪を起します。このこだわりに付き合うことが本当にツラくて、毎日が地獄のようでした。
自分がやる、もう一度やる
『僕がやる』というのも定番で、「寝る時に部屋の電気を消す」「テレビの電源を切る」など自分がやることにこだわって譲りません。加えてうまくいかなかった時に『もう一度やる』という癇癪が4歳頃から多くでてきました。 『もう一度やる』というのはある意味”挑戦”ですから良い場合もありますが、危ないことをもう一度やると言い出すと本当に大変です。
こだわりへの対応
このように自分の中で特定の物事やルールに強いこだわりを持つと、それを急に変えたり、やめることができません。無理に止めさせようとしたりするとストレスとなり、癇癪やパニックなど行動が悪化することもあります。
自閉症の子は、物事の<切り替え>が苦手なので、同じことをずっとやっていたりします。<変えられない><やめられない><別のことをはじめられない>ため、周りの人がうまく対応してあげる必要があります。どのように対応すると良いか、私の経験を踏まえていくつかまとめてみました。
① 見守ってあげる
おもちゃを並べるのは悪いことではありません。子供が自分の中にルールを持って遊んでいるというのは、実はすごいことだなと思います。周りに迷惑をかけていないのであれば、やりたいように遊ばせてあげて問題ないと感じます。時には思いもよらないすごいものを作っていたりするので、子供の「好きなこと」そして「集中力」をあたたかく見守ってあげる気持ちでいたいです。
② 他に関心を広げてあげる
ある特定の物しか関心がない場合、「やめなさい!」と言いたくなる時もありますが、無理に止めさせず、他に興味・関心を広げてあげると良いと思います。「こんなのもあるよ~」「これすごくカッコいいんだよ~」などおもちゃや遊びのレパートリーを増やしてあげることで、他のものに関心を移してこだわりを薄めていきます。すぐに興味を示さなくても、経験を重ねていくと少しずつ変化していくでしょう。
③ 具体的に伝えてあげる
指示したときに行動を起こせないのは、そもそも指示している言葉自体を理解していない場合があります。抽象的な言葉を一度にたくさん言っても伝わらないため、要点を絞って具体的に伝えてあげると理解しやすくなります。
・ もう少ししたらお片付けをしよう → 10数えたらお片付けをしよう
・ 時間になったら終わりだよ → 時計の長い針が6に来たら終わりだよ
④ 目で見てわかるもので伝えてあげる
言葉の理解が難しい場合のサポートとして、<文字><絵><写真>など視覚で分かるものを取り入れると良いと思います。自分で絵を描くのが面倒な時は「絵カード」が市販されているので、活用してみても良いかもしれません。生活場面やルールなど色々な種類があります。
また、自閉症の子は物事を予測したり、想像することも苦手なので、1日のスケジュールや取り組みなどをホワイトボードなどに示してあげるのも良いです。目で見て次に何をやるのか分かりやすくなりますし、子供自身が「分かる」ことに自信を持つようになるはずです。
⑤ 変化を少なくしてあげる
いつも同じことをする=急な変化に対応できないので、できるだけ生活場面で変化を少なくしてあげるのが良いと思います。変化=刺激と捉えてもよいかもしれません。
例えば、靴の置き場所などが急に変わると混乱するため、同じ場所に置くようにしてあげます。
靴自体が新しくなる場合、その靴に興味が集中してなかなか履いてくれなかったりする場合があるので、新しい靴を出すのは土日のお休みの日にするようにします。そこで慣れたら平日のお出かけの時はスムーズに履いてくれます。
物だけでなく、時間やスケジュールにも可能な限り変化を少なくしたいところです。ただ、少しずつ変化を受け止められるようになってくると思うので、混乱しないか子供の様子やタイミングを見ながら少しずつ変化させて柔軟性を養っていければよいです。
⑥ いっぱい褒めてあげる
息子の場合、たくさん褒められて改善があったのが「ひどい偏食」です。保育園でも白米とパンしか食べず、それが半年以上続いたと思います。しかしある日、先生が給食に出たニンジンを勧めたところ、パクリと食べたそうで、その時にいろいろな先生が一斉に息子を褒めてくれました。
そのことが本人の中でとても嬉しかったようで、その日から少しずつ食べ物へのチャレンジが始まりました。子供にとって「褒めてもらえる」ことはとても大切なのだと実感しました。
子供が何かできた時にはいっぱい褒めてあげたいですね。そしてそれは家庭だけでなく、保育園など周囲にも協力していただきながら成長のサポートができると良いです。